📕読書メモ: 劉慈欣短編集「円」

三体の作者の短編集。実は三体を読む前にを読んでいたのだけど、感想を何書こうかなぁと思ってたら結局三体を読んだり感想を書いたりで今に至る。

三体を読み返してからだと「あ〜このアイデアを三体でこうリメイクしたのかな」と思えるところがちらほらとあって楽しい。
ここの短編どれかを面白いと思えるなら、三体も面白く読めると思う。

印象に残ったエピソードについて軽くメモ。

以下本編の内容に触れます

書店の立ち読みで冒頭のこのエピソードをチラッと読んで「あ、これならサラッと読めそうだな」と思って手に取った。
実際その通りでスルスルと読めて次以降のエピソードに至る。

採掘のスケールの大きさとそれにまつわる出来事のエグさが印象的。ウイグルの採掘者が頑なに言い伝えについて強調するけど、これだけスケールでかいとそりゃ何をするにも言い伝えを頼りたくなるよなと思う。

田舎特有のしんどさの描写が分かる〜〜、と思いながら読んでしまう。劇中でのやり方がぶっ飛んでいながらも、技術が集約する場所に才能が引っ張られていくというシステム自体は同じなのが印象に残る。

三体でもそうだけど著者の人、ほんとあの科学者好きなんだな〜って思う。
象徴的な人物だから作品に取り入れてる、という可能性もあるとは思いつつ。

リアルバタフライエフェクト合戦。シュレディンガーの猫とかもそうだけど、理系としては思考実験をガチにエンタメに振り切ったものを読めると楽しい。

円円の奔放さが魅力的。親子喧嘩のところの描写がリアルさを感じる。
多分一番ハッピーエンドな話なところもあるからか、個人的に一番好きなエピソード。

IT企業あるあるが身につまされるのと、他のSFギミックのリアリティの詰め方が絶妙なところもあって、二番目に好き、というか印象に残るエピソード。

カオスの蝶の時系列/スケールがちょっと変わった版、だなと思いながら読んでいた。

知識/意識があることが幸せか？という問題はよくあるけど、この対話劇の形式と組み合わせる発想がすごい。
どういうきっかけで思いついたのか聞きたくなる。

最後のエピソード。ある意味三体の読切作品的な立ち位置。
計算の理屈は分かるけど、このシステムだと正直自分が兵隊なら計算ミスって処される自信しかない。
真面目に考えると誰がエラー起こしたかでめちゃくちゃ責任の擦り合いになりそうで笑う。